建設産業は「ものづくり産業」であり、その本来の使命・役割は、国民生活や産業活動を支える根幹的な基盤である住宅、オフィスビル等の建築物や社会資本の整備を通じて、わが国経済の発展に貢献することであります。
建設業の中でも専門工事業は、建設現場での生産活動の中核を担い、現場における施工力を保持し、建設産業を根底で支えると言う重要な役割を果たしています。
しかしながら、近年の建設投資の大幅な減少は、こうした建設産業を取り巻く経営環境を大変厳しいものとし、あらゆる企業が一様に成長していくことを困難なものとしております。
そこで、各企業においては、競争力を高め、経営改善を図るために、一層のコストダウンや自らの技術力・施工力の差別化・高付加価値化に取り込むことが求められております。
また同時に、こうした企業努力が適切に評価されるシステムの整備が急がれるところであります。
全国基礎工事業団体連合会におかれましては、組合員の結束の下、杭打ち工事業の中でも、高度な機械と優秀な人材を駆使して、ものづくりに携わる優良・適格業者のあるべき姿を長年にわたって追求され、その取り組みの成果として、今般「基礎杭施工業『企業力評価』制度の実施に向けて」を公表されました。
この報告書を作成されるに当り、貴連合会では、企業力評価のための組合員実態調査を実施されるとともに、財務諸表分析や制度普及のためのセミナーを開催されるなど、創意工夫を重ねてこられましたが、会長をはじめ関係役員、会員の皆様方の並々ならぬご努力に対し、改めて敬意を表します。
また、この取り組みが元請建設業をはじめ公共工事の発注機関から高く評価されるよう、これまでの取り組みを礎とされ、評価システムの実態の運用に向け、様々な条件整備や効率的なPR手法の検討に鋭意取り組まれることを願ってやみません。
国土交通省に起きましては、技術と経営に優れた企業が成長できる環境の整備に努めており増すが、こうした取り組みと合わせ、貴連合会の諸事業が、我が国の専門工事業の健全な発展に大きく貢献されることを心より期待しております。
平成20年3月31日
社団法人 建設産業専門団体連合会
会長 才賀 清二 郎
建設業許可業者数は、平成18年度末で52万社であり、平成11年度末のピーク時に比べ8万社減少している。許可業者数は、建設投資のピークであった平成4年度末と同水準であり、この間の建設投資の減少を踏まえれば、建設業界は明らかに過剰供給構造にある。
改正独占禁止法の施行、大手ゼネコンの脱談合宣言、一般競争入札の拡大などを背景に価格競争が激化し、公共工事や民間工事を問わず安値受注が続いている。
この影響で下請負単価の下落が続いているため、建設生産物の品質確保に支障を及ぼすほか、下請業者や技能労働者へ不当にしわ寄せされ、建設産業の健全な発展を阻害する要因になっている。
建設産業専門団体連合会(建専連)は、技術と経営に優れた企業が生き延びられる環境整備、建設生産物を適正価格・適正工期で提供できる環境整備、技術・技能者が生涯を託せる環境整備などを目指して、行政機関、元請団体、政府与党などへ様々な政策提言を行っている。
昨年度は、良い仕事をしたことが次の仕事につながる「良い循環」の実現を目指して「施工体制事前提出方式(オープンブック方式)の導入」を提言している。
この結果、国土交通省は直轄工事を対象に「専門工事審査型総合評価方式」を試行するとともに、ダンピング対策として特別重点調査(失格基準の設定)を実施している。
特に、専門工事審査型総合評価方式は、専門工事業者の施工計画、下請負見積書、同種工事の施工実績などを評価するものであり、専門工事業者に対して技術・創意工夫の提案、適正な見積書の作成などを要求している。
また、建専連は同一条件で競争ができる公平な競争基盤を整備するため、専門工事業者の保有する施工能力などに着目した客観的評価制度(専門工事業版第二経審)の創設についても提言している。
全国基礎工事業団体連合会の「優良・適格業者選定制度」は、設備機械や技術・技能者を背景にした施工能力と、技術・創意工夫等の提案能力を組合わせて総合的に企業評価を行う制度である。
この制度は建専連や国土交通省が推進する施策に合致し、正に時機を得た適切な取組みと評価されるものであり、他の専門工事業界の模範になるものである。
現在の世の中はPR時代である。専門工事業者が保有する様々な情報を積極的に発信することにより、公共発注者や元請業者から評価・活用される優良企業を目指すべきである。
貴連合会における「優良・適格業者選定制度」の新たな展開に期待するものである。
平成20年3月
基礎杭施工業者「優良・適格業者選定制度」に期待すること
財団法人建設業振興基金
常任参与兼構造改善センター部長 三輪 栄一
(財)建設業振興基金では、これまで建設生産システム合理化推進協議会の運営等を通じ、契約適正化の推進や専門工事業者の経営力、施工力の強化についての支援を実施してきているところです。
このうち、専門工事業者の施工力・経営力を適正・中立に評価する仕組みについては、平成7年から専門工事業者企業力指標(ステップアップ指標)の検討、試行にも取り組んできました。
いわゆるステップアップ指標は、専門工事業者自らの経営計画、経営改善、営業活動等の指標として活用できるとともに、総合工事業者がその協力会の指導の際の参考資料として活用できる指標となるもので、これまで労務主体の5職種(とび土工、型枠大工、鉄筋、左官、塗装)を対象として検討がなされてきました。
この検討の過程では、「発注者や総合工事業者が専門工事業者を選定する指標として検討すべき」との意見や「労務主体の職種だけではなく、機械を保有する職種についても検討が必要」等の課題も指摘されておりました。
今回、貴連合会で新たに取り組まれた「優良・適格業者制定制度」は、まさに、このステップアップ指標の検討時に指摘されていた「発注者や総合工事業者が専門工事業者の選定に活用できる制度」となっており、かつ機械を保有する職種も対象とされていること等から、当基金と致しましても、本取組みに対して微力ながらご支援をさせていただいてきたところです。
建設産業を取り巻く環境は、ステップアップ指標の検討に着手した当時と大きく変化しており、建設産業に対してはこれまで以上に、安全や品質に対しての要求が高まるとともに、その生産プロセスにも関心が高まってくるものと考えられます。
このような情勢の中で、総合工事業者の「より技術力、技能力が高く、提案能力に優れた専門工事業者」への発注欲求も一層高まってくものと考えており、本制度が総合工事業者や公共発注者に広く普及し、品質の良い建設生産物を提供していく仕組みの一つとなることを大いに期待いたしております。
平成20年3月